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山は
昔から日本人の暮らしの中にあったわけだし 山があれば、登る人もいるだろう・・・くらいに ぼんやり思っていた。 でも、改めて考えてみれば、 生活に必要ならば山に入ることはあったとしても 生活それ自体と離れて ただ「山に登ろう」ということはしてこなかったんだよね、 ということをきちんと意識したのはこの3日くらいです。 達成感を得るためにとか、景色を堪能するためにとか 純粋に楽しむ目的で山に登ることが一般的になるのは ごく最近のことなのだ。 行ったところで、生活の足しになるわけじゃない頂上に ただ登るなんていう余裕は 当時の日本人にはなかったのだ。 知らなかった!(私だけ??) ぼんやりと どの山にだって、頂上に行く道はあるのだ・・・と なんの根拠もなくそんな気がしてたけど 登山道なんていうものがあるのは 山に登ろうという人がいるからなんだし それは本当にここ最近整備されたに過ぎないんだな ということを改めて知りました。 そんなこんなを思ったのは 新田次郎の『剣岳 点の記』を読んだから。 とてもよい本でした。 明治後期に、地図作成を管轄していた陸軍の命を受けて 剣岳に測量の基準点となる三角点を設置した 柴崎芳太郎さんという実在の方をモデルにした小説。 当時剣岳は人跡未踏の山で 信仰上の理由から「登ってはいけない山」と言われていたし、 登ろうとしても険しすぎて登れないと言われていた山だそう。 頂上近くまで行っても、だれもが岩壁に阻まれて登れなかった山。 弘法大師をして、草鞋三千足を費やしても登れなかった山と言われていたんだって。 まず、登れない山があるというのがオドロキだったのだ。 山なんて頑張れば登れるくらい思っていた私に 「そうか、よく考えてみたらもともと山に道なんて付いてるわけはないのだ」 という当たり前なことに気づかせてくれた。 地図だって当たり前にある世の中で、 何もないところから地図を作った人たちの苦労に、 私はいままで全く無頓着だった。 地図だって、なんとなく自然に出来てきたわけじゃないのだ!という事実。 測量するために半年も山の中にいて お天気とカクトウしつつ道なき道を歩いて、 機材を運んで、測量の基準点を設置して、測量して・・・と、 そこには、のほほんと生活している私には想像を絶する苦労が。 今みたいに、ちゃんとした靴も、ゴアテックスみたいな素材も全くなかった時代。 山用のコンパクトな鍋釜、燃料、なんにもない。 テントだって暴風雨の中ではひっきりなしに雨がしみてくるようなシロモノ。 もちろん重い。 地図だってないんだよ!自分たちが作ってる最中なんだから。 そこに描かれる実在の主人公と、苦労を共にする助手、 ガイドとして一緒に山に入り、この人なくして・・・というほどに いろんな事に心を砕いて柴崎さんを助ける現地の人たち。 今も剣岳に向かう途中に そのときのガイドを勤めた宇治長次郎さんの名前をとって 長次郎谷というところがあるそうで、 そんな記述を読むと、ああ、よかったなぁ~と思う。 その長次郎さんはとても魅力的な人で その後山岳ガイドとして名を馳せた人だそう。 きっと昔はこういう朴訥で、真面目で、魅力的な日本人がたくさんいたんだろう、と思える。 山岳小説はあまりたくさん読んでいないけど、 読んだものはそれぞれ「読んでよかった」というさわやかな読後感が残る。 はじめて山岳小説を意識したのはハタチくらいのころ。 そのころサッカーのDirをしていたEさんと本の話をしていたとき 『アラスカ物語』が面白かったという話を聞いて Eさんにアコガレの気持ちを抱いていた私としては 「読まねば!!」と鼻息荒く読んだのです。 『アラスカ物語』は山岳小説じゃないんだけど、 とても面白かったので、新田次郎モノを読むようになり 小説の中の山に魅力を感じて、「山岳小説」という括りが存在することを意識したのだ。 その後しばらくその手の本は読まなかったけど かなりしてから井上靖の『氷壁』を読んで、その面白さにびっくり。 井上靖の文章はとても好きで、小説もいくつか読んでいたけど 歴史小説ばかりで井上靖の現代モノを読むのは 子どもの頃読んだ『しろばんば』を除けば、そのときがはじめて。 『氷壁』はお勧めです。 ここ1~2年で読んだ『クライマーズハイ』とか『沈まぬ太陽』なんかは 山岳小説という風には括れないけれど、 どちらも山が物語に絡んできて、山の風景とか空気みたいなものを感じられるし、 物語の展開がスピーディで、息もつかずに読みました。 自然を相手にする人の話は良い。 読んでいて清々しい。 小説読んだのは久しぶりだったけど、『剣岳』に続いて今『孤高の人』読んでます。 まだ最初のほう。でも、面白くなりそう~! 『剣岳』は一冊で、「あ~、もう終わってしまう~」という感じだったので 上下、2冊あるのもうれしいところです。 コメント(8) 先日日経に載ってた野口さんの手記には、エベレストで8000mを越えると、あちこち、たくさんの遺体が、新しいのから古いのまで凍結して残ってる…とのこと。エベレストに登る人は特別な冒険家なのだろうけど、今普通にある地図だって、食べ物だって、薬だって、かつて多くの人の冒険や挑戦の賜物なんだよね。 2007/5/22(火) 午後 10:57 [ あおぞら ] 野口さんは日経に連載を持ってるの? 今の私たちの生活を支えている多くのものが、先人の努力の結晶なんだよねぇ。 いろんなものにドラマがあって、面白いね。 2007/5/23(水) 午前 1:11 [ はっぱなっぱ ] えっ♪私も井上靖さん好きなんです。『しろばんば』とか『北の海』とか。『氷壁』はまだ読んだことないので、今度時間みつけて読んでみますね。 2007/5/24(木) 午後 9:35 [ boubou ] そうですか~♪あんまり井上靖が好きっていう人、周りにいないので嬉しいです。 私は「天平の甍」と「楼蘭」がものすごく好きです。 この人の文章、無駄がなくて一見硬い文章のように感じるけど、染み透るように胸に入ってきてスゴイと思います! 2007/5/24(木) 午後 10:25 [ はっぱなっぱ ] 私もトラックバックしたことが無かったので試させてもらいました。やり方は『この記事にトラックバックする』をクリックしたあと投稿画面になると思いますが、その画面のトラックバック先のURLをコピーして貼り付けたい記事に修正でトラックバック先URLにペーストしたら出来ます。(他の方法もあるかも知れませんが…。) 2007/5/24(木) 午後 11:09 [子連れ登山] 子連れさん!手取り足取り、ありがとうございます♪明日トライしてみます! 2007/5/24(木) 午後 11:36 [ はっぱなっぱ ] もし孤高の人が読後よかったら、同じく新田次郎の銀嶺の人、栄光の岩壁もお勧めですよ。 (時代は前後しますが一応この3作を筆者は3部作にしています) 2007/6/22(金) 午前 6:38 [ inoueam ] inoueamさん。「孤高の人」よかったです! 三部作なんですね、読んでみます♪ 2007/6/22(金) 午後 4:13 [ happanappamama ]
by happanappamama
| 2007-05-22 22:34
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